ストックカンリstok kangri 6153m 2019年8月29日~9月1日

インドの北部、ジャンムー・カシミール州、ラダック地方にある6153mの山、ストックカンリに登ってきました。

 

全部で10日間、山では3泊4日でした。

成田空港からニューデリーを経由して、レー(Leh)という街に降り立ちます。ニューデリーに着いたのは夜中の12時。レーに向かう飛行機は朝の5時。その間、空港の隅でザックからシュラフカバーを取り出し、床に敷いて横になりました。でも、床がとてもひんやりするので眠れません。

 

着陸寸前の窓の外。谷にある空港なので山の尾根が飛行機の翼のすぐそこに見えて、ぶつかってしまうのではないかと一瞬冷っとしました。でも、実際はそんなに尾根の近くを飛ばないんですけどね。

乾燥地帯なので山に緑色は見えません。

レーの標高は約3500mあります。

到着したその日にガイド、コック、アシスタント、荷運びの馬を手配して、29日からの登山に備えました。

 

登山の前日は高所順応のため、1日レーの街を観光しました。

ちなみにこの日は、レーからさらに北に車を1時間ほど走らせて標高5,000mにあるカルドゥン・ラという峠に、高所順応を兼ねて行ってきました。

日本では見られない、乾燥した土地の山の景色に感動しました。


1日目。9時にホテルを出発。車を走らせ麓の村のストック村に向かいました。到着し、荷物を馬に乗せている間に、ガイドと私たちは先に出発しました。

10時にストック村を出発。



昼食を食べていると…

 

なんかくれだワンU゚ェ゚U


13時30分、モンカルモというキャンプサイトに到着(標高4,480m)。 

キャンプサイトに着くとすぐにお茶とお菓子が出てきました。

馬とコックとアシスタントは私たちより後に出発したのに、先に着いて宿泊の準備をしていました。

テントからストックカンリが見えます。

19時から夕食。インド料理のような辛くて濃い味付けではなく、チベット料理の味が薄い、やさしい味付けです。

 

ここに着いてから、夕食が始まる19時まで頭痛と気持ち悪さがありましたが、夕食になるころには頭痛が弱まり、寝ることにはすっかり頭痛は消えて、ぐっすり寝てしまいました。目が覚めると、あれ?家かな?と自分がどこにいるのかわからなくなるくらいぐっすりと。

2日目。

朝の美しい光景です。

9時、ベースキャンプに向けて出発です。

11時30分ベースキャンプに到着(標高4900m)

小雨が降りだし少し寒い。

テントを張り寝床を確保。

 

昼食時、ガイドと今晩登るか、明日にするか話し合いました。

TKがチャンスがあるなら今晩登りたいというので、今晩のアタック決定となりました。

 

本来は、もう一泊して高所順応をするのですが、TKも私も高所順応ができてしまっていたので、ベースキャンプに着いたその日の夜に山頂アタックとなりました。

 

17時に夕食、22時30分に軽食(彼らは朝食と言っていた…)、23時に出発。TKとKKのみ。SKは体調不良のためテントでお休み。

 新月あたりのせいか、月が出ていなく、辺りは真っ暗。ヘッドランプの明かりだけで歩きます。

 

さもない傾斜も、標高が高いせいかスピードが上がらずもどかしい。おまけに真っ暗なので、自分はどういうところを歩き、この急坂をあとどのくらい歩けば一息つける場所に辿り着けるのか、そういう目安も一切付けられないまま歩くストレスもあり、非常に長く感じました。

少しずつ傾斜がきつくなってきたところでアイゼンを付けました。雪は硬く締まっていてアイゼンの爪が良く刺さり登りやすい。しかし、難しい登りではないので、単調でつまらなくなってくる。時間は深夜の3時頃。つまらなくなってくると眠くなる。眠くてガクッとなると、サーっと下まで滑り落ちそうなので、気を引き締める。

 

見上げると遥か先に、ヘッドランプが見える。あんな遠くのあんな高いところまでこれから行くのか。というより、行けるのか…。真っ暗なのでどういう道のりが待っているのか全く見えないのがストレスでした。

 

TKが息が苦しくてスピードが出ないという。私も眠気と夕食を食べ過ぎたので、胃の気持ち悪さとお腹が緩くなってしまっているので、もうここで下りようかと話をする。しかし、ガイドは、肩まで行こうという。呼吸が苦しければ深い呼吸をすればいい、お腹が気持ち悪いのは問題ないと言われる。TKも私も頭痛はないのでここから下りる必要はないという。頭痛があったら直ちに下りなければいけないそうだ。

 

ザックの横に入れていたナルゲンの水が凍っている。

日が出れば体が温まり、体調も良くなるだろう。ガイドに日の出は何時か聞くと、5時半ごろという。

それまでは寒さに耐えて登ろう。

 

5650m付近から一気に傾斜はきつくなります。私は眠気に負けそうです。「I'm sleepy」というとガイドに笑われてしまいました。でも、眠いのは危険だということでガイドとロープをつなぎ、アンザイレンで登ることにしました。

 空気の薄い中、お腹が気持ち悪いのをこらえ、何とか肩まで登り切りました。標高約5,850m。

 

さあ、ここから山頂までの残りの約300m。1時間ほど。

日が出てきて暖かくなると期待していましたが、薄曇りで日の光が弱く、あまり温まりません。でも、それでも気分は良くなってきました。

 

TKは呼吸が苦しいし、私もおなかの調子が悪いし、無理せず私はここで下りますといったのですが、TKが行くといいました。

お腹の調子が悪いのは、その辺に隠れて出せばいいとガイドは言いますが、もうここは稜線で丸見えだし、端に寄ったら落ちてしまいますよ(笑)  

軽く食べ、休憩をしてから山頂へと向けて歩き出しました。

歩く先を見ると、なんと、雪と岩のミックスの岩稜ではないですか!!私は一気にやる気が出て、お腹の調子が良くなりました。

こういう道、楽しい~~~と心ははしゃぎながらも、岩が出ているところはアイゼンの前爪で岩をきちんととらえ、雪のところはキックステップで着実に進みます。

やっとストックカンリの山頂が見える場所まで来ました。

雲が晴れ、青空が見え、周辺の山も見え、美しい景色が広がります。

そこからまもなくで山頂に着きました。

 

初めての6000m峰。私は高山病にならず、6153mにいても平地にいるのと変わらずに快適です。

 

しかし、TKは山頂に着くなり、血を吐いてしまいました。

山頂からの美しい景色。


ガイドさんと。


TKの調子が良くないので早めに下山を開始しました。

私が先頭、真ん中がTK、一番後ろがガイドです。

呼吸が苦しいTKのために、ゆっくりゆっくり歩きました。岩場も慎重に。

とても天気が良く、稜線なので日がまともに当たります。青空と美しい景色を見ながらの下山です。

登りは真っ暗で何も見えなかったところが、今ではさんさんと日が当たり、こんなところを歩いてきたんだ!全然難しい道ではないし、そんなに時間がかかるようなところでもない。でも、真っ暗で何も見えない、知らない道を歩くのはなんて不安で、時間が長く感じるものなのか!と思いました。

 

呼吸が苦しいTKのためにゆっくり歩いたので、なんと、TKは20時間行動となってしまいました。それでも、もともと体力があるので苦しくともゆっくりと自分の足で歩くことができたのです。100kmマラソンなどのウルトラマラソンを走れるだけの体力があります。

4日目。血中酸素濃度を測ると97ありました。4900mにいても平地と変わらない濃度です。どおりで体調が良く、いつもと変わらずに過ごせるわけです。

 

外国でも、テントでも、高所でも、ぐっすり眠れ、出されるものは何でもモリモリ食べて、毎回のお茶の時間も砂糖をたっぷり入れて飲み干し、これでは全く痩せません(笑)

 

TKは相変わらず呼吸が苦しいので馬に乗って下山しました。

SKは酸素が足りず、フラフラになり倒れそうになりながらもなんとか歩いて下山しました。

下山も美し景色を楽しみながらたくさんの写真を撮りながら歩きました。でも、薄曇りなので輝くような美しさはありません。



ストック村まで歩いて下山し、そこから車でレーまで戻りました。

 

6000m峰を登っているのに眠くなってしまう緊張感のなさ、高山病にはならなかったけど、夕食を食べ過ぎて胃を気持ち悪くし、ついでにお腹も緩くなってしまい、途中何度も立ち止まり、苦しみながらも登り、岩稜を見た途端、一気にやる気が出て眠気もおなかの不調も吹っ飛ぶという、私らしい珍登山となりました。

 

海外の山のスケールの大きさに感動し、ガイド、コック、アシスタント、馬使いの人、馬、仲間で登っている感じがしてとても感慨深い登山でした。(記 Kumiko)

《おまけ》

レーの街から見えるストックカンリ。

 

カンリ(Kangri)というのは、雪のたくさんあるピークという意味だそうです。

カン(kang)が氷・凍る、リ(ri)が山という意味だそうです。

帰りの飛行機の窓の景色